G県H市のある村に、ある家族が住んでいた。
寝たきりで99歳にもなる祖父、その孫で5歳のA、そしてその両親。
昼間、両親は働きに出ている。
Aはとても好奇心旺盛で家の中を遊び回っていた。
ある日、Aが何気なく襖を開けると天井裏に通じる板が外れていた。
家の中にも飽きてきたAはしまってある布団をよじのぼり、そこに入った。
周りは想像以上に暗く、恐怖心が湧き上がった。
しかし、好奇心が勝り更に進んでいった。
しばらく歩き回っていると足元に箱があることに気が付いた。
こんなところにあるくらいだから、きっとすごいものに違いないとAは考え、入り口の方に運ぼうとした。
しかし異常に重い。
子供の頭ほどなのに10kgはありそうだ。
仕方なく引きずっていくことにした。
17: >>15の続き:2011/05/23(月) 01:44:25.90 ID:/PhlITMV0
だんだん入り口に近付くにつれ、箱の側面が見えてきた。
真っ黒で、ところどころ白い。
ふたは黒い紙で固定してあった。
さらに近付く。
さらに明るくなってくる。
真っ黒だと思っていた側面は、白い箱に黒い文字がびっしりと書かれているようだ。
蓋の紙も同様。
白い紙に文字がびっしり書いてあった。
振り向いて入り口の位置を確認する。
あと1m位だ。
もう一度箱を見た。
そこで、あることに気が付いた。
箱の側面にびっしりと書いてある文字。
それはお経だった。
蓋についている紙はお札だった。
その途端、Aの体に恐怖が電気のように走った。
その時、前方の暗闇から
「ペタ・・・ペタ・・・」
という足音がしてきた。
Aは咄嗟に『それ』を絶対に見てはいけないと思った。
振り向いて逃げようとしたが、恐怖で足が動かない。
どんどんこっちに近付いてくる。
あと少しで『それ』に入り口の光が当たる。
そうしたら見えてしまう。
あと少し・・・
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 01:45:15.67 ID:/PhlITMV0
もうだめだと思った瞬間、Aの体は入り口の穴に落ちていき、布団の上に落ちた。
Aが顔を上げると、そこには寝たきりのはずの祖父がいた。
わけもわからず唖然としていると、祖父はいきなり
「去れ!!」
と叫んだ。
Aは混乱してきた。
祖父は再び
「もう十分であろう!!」
と叫んだ。
祖父の顔を見上げる。
しかし祖父はAを見ていない。
入り口を凝視している。
正確には、入り口にいる『それ』を。
しばらくその状態が続いた。
とても長い時間に思えた。
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 01:47:24.39 ID:/PhlITMV0
5分ほどして、祖父はAにゆっくり
「後ろを決して振り向かずに、わしの部屋へ行け。いいな。絶対に振り向くな」
と言った。
Aはわけもわからぬままさっと飛び降り、隣の部屋を目指した。
そこで呆然と立ち尽くした。
さらに5分後、祖父がよろよろと部屋に戻ってきた。
今にも倒れそうだ。
Aは祖父を支え、布団に連れて行った。
祖父は横になると、ため息をつきゆっくりと話し出した。
「A、今のはな・・・わしの・・・」
とまで言ったとき、向こうの部屋で襖が開く音がした。
そしてまた
「ぺタ・・・ぺタ・・・」
という足音が聞こえてきた。
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 01:47:48.45 ID:/PhlITMV0
祖父はいきなりAの手を掴み、布団の中に引きずり込んだ。
99歳とは思えないほどの力だった。
今度は祖父の部屋の扉が開いた。
祖父の体はガタガタと震えていた。
そして何か呟いていた。
よく聞こえなかったが
「すまない」
「許してくれ」
「この子だけはやめろ」
という風に聞こえた。
Aはそのうち気が遠のいて目の前が揺れてきた。
そのとき布団の隙間から『それ』の足が見えた。
腐っているかのような紫色でところどころ皮膚がずり落ちていた。
そのままAは気絶してしまった。
21: 終わり:2011/05/23(月) 01:48:18.34 ID:/PhlITMV0
気が付いたとき、Aは祖父の布団に一人で寝ていた。
時間はあのときから5時間も過ぎている。
『祖父は・・・?』
Aが家中を探してもどこにもいない。
両親が帰ってきて、警察がでてきても見つからなかった。
1週間後、どうしても気になり、Aが恐る恐る襖を開けると、
以前あった入り口は完全に塞がっていた。
Aは安心して襖を閉めようとした。
その時、Aは見てしまった。
厳重に塞がれた入り口の戸に挟まっている、祖父がしていたお守りを。
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