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くねくね⑥

私が小学校4年生の夏休みのことでした。
3歳下の幼馴染みと、家から1kmほど離れた河原へ遊びに行きました。

「暑いから持って行きなさい。」と、祖母が用意してくれた
氷水入りの水筒をさげて、たらたら坂道を下って行きました。

河原までは子供の足でも10分そこそこ。
午後の日差しに炙られながら、小一時間遊んだでしょうか。
時々、持ってきたタオルを水筒の水で冷やして、幼馴染みの肩や
首を拭いてあげました。

夏の太陽はまだまだ高く、川べりに立つ私たちの影は
足元に溜まっていました。

夕方までまだ間があるし、遠回りして帰ろうか、と私たちは
いつもは通らない道を選びました。


中学校のグラウンドの脇を通り、農家の作業小屋の前を通り過ぎ
牛小屋を通り過ぎたら、田んぼが広がっていました。

道路はアスファルトで舗装された、割と広い道路です。
車の邪魔にならないように右側を、青く伸びている稲に
ささやかにいたずらしながら、てくてく歩いていきました。

「ひまわり。」

幼馴染みが田んぼの真ん中を指差しました。
「?」見ると、黒々とした大きなひまわりが、首をうなだれて
ゆらゆらと動いています。

「おっきいねー。踊ってるみたい。」

幼馴染みはひまわりの動きに合わせるように、うつむいて肩を動かし始めました。

最初は笑って見ていました。
次に、いい加減飽きて「行くよ。」と声をかけました。
でも動きをやめない幼馴染みに、なぜだかうすら寒さを覚えました。


「もうやめなよ!」

言いながら、なぜそんなにひまわりの真似が面白いのかと
田んぼのひまわりを見ると、それはひまわりではありませんでした。
だったら何なのかと聞かれると、”ペラペラの人間の影”というのが一番近いかもしれません。

「わ、わ、わ、わわわわわわああああああああああぁぁっぁぁぁぁ」

叫び声は自分の口から出たのでしょう。
近くの作業小屋から人が飛び出してきた時には、ゆらりゆらりと動き続ける幼馴染みと
正気をなくしてタオルを振り回している私がいたそうです。

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