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パチンコ屋

俺が3年程前まで働いていたパチンコ屋の話。
場所は神奈川県某所、国道沿いに立つボッタ店。

客からチョコチョコ噂は聞いていた。
便所が勝手に流れたとか夜中にパチンコ台が動き出したとか。
まぁパチンコ屋に付きものの他愛もない話。

特に気にしていた訳でも無かった。あの日までは。



その日は新台入れ替えでスタッフ全員が遅くまで仕事をしていた。
ようやく入れ替え作業が終わり、1階の休憩所(二階建てで一階が休憩所と社員の寮になっている)でスタッフ達と談笑していた時の事だ。

休憩所の店長室からの直通電話が鳴った。

当時リーダーと言う立場の俺が電話を取ると、店長が不思議そうにこう言った。

「駐車場の鍵しめたよね?」

駐車場の鍵は出入り口と共に閉店時に閉めるので、開いている訳は無い。俺自身確認もしていた。

「はぁ。確認しましたが」 そう答えると店長はますます不思議そうな声になった。

「なんか軽自動車が走り回ってるんだよ…」

有り得ない事だった。

と言うのも防犯カメラで見える駐車場は休憩所からも見える位置にある。俺はイタズラかと思い、

「あぁ多分、マリオカートの練習してるんすよ」とくだらない返答。
直後、店長がウワッと驚きの声をあげた。

「人…乗ってない」

しつこいなと思いながらも店長なので合わせてあげる事にした。
「○○ちゃん(バイトの女の子)ちょっと駐車場の幽霊を退治してきて」

「ヤダー」

「くだらねー」

なんて笑ってると店長がポツリと、
「マジで鍵確認してきて…」

それだけ言うと電話を切ってしまった。何だかその言葉が余りにも冗談ぽく無かったので、見に行こうと思い上着を着ていると、突然さっきまで笑っていたバイトの女の子が悲鳴をあげた。

「キャー!!」

何事かと思い女の子に近づき体を支えると、女の子は窓の外を指差して震えている。

軽自動車だ。

窓の外、さっきまで無かったはずの軽自動車が音もなくそこにある。
窓の外にピッタリとくっつけて無人の軽自動車が止まっているのだ。

一同パニック状態。
休憩所から逃げ出そうとする奴を止めて、俺は「とりあえず固まろう」なんて意味不明な発言をしている。

軽自動車から目を離せずにどれくらい時間がたったか。とても長く感じた。
実際の時間は分からないが体感的に1時間もたった頃、無人のはずだった軽自動車の助手席ドアがゆっくり開いたのだ。

車は何者かが乗り降りしてるように僅かに揺れ、バタンと閉まる。
一同はますますパニック。悲鳴を上げて泣いている女の子が数人。

すると突然休憩所のドアが開いた。流石に俺もこれにはビビり声を上げてしまう。

するとそこに眠そうに立っていたのはその日非番の古参社員。どうやら、女の子の悲鳴に起こされたらしく様子を見に来たらしい。

とりあえずしどろもどろに状況を説明。
すると彼は少し頷いて「大丈夫」と一言。
彼に促されて後ろを振り向くと軽自動車は消えていた。彼は少し笑って、

「昔は良くあったんだよ。最近は見なくなったけどね」と平然として言う。

「害は無いから」

そう言うと自分の部屋に帰ってしまった。

一同が呆然としていると直通電話が再び鳴った。店長だ。

「今日は帰った方が良いよ」

説明する間も無く切られてしまった。
長居もしたく無かったのでそそくさと荷物をまとめその日は帰る事に。
後日、メンバーは続々と辞める事になるのは言うまでも無い。

後日談だが、店の駐車場でガス自殺をした夫婦が居たとか。この話が本当かどうかは確かめられなかった。

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