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よさぶろう

僕が小学校の頃、家に遊びに来ていた従兄弟に、

「夜中の0時丁度に『よさぶろう』と三回唱えると、自分の右側に『よさぶろう』という霊が出る」
という話を聞いた。

夏休みの晩、蒸し暑くて眠れなかった。
ふと時計を見ると、時刻は0時00分。

その時、あの話を思い出した。

僕は迷わず『よさぶろう』と三回唱えた。
そして自分の右側を見た。

しかしそこは壁。
やっぱり出ないかと思い、残念な気分で左側を見た。

すると、扇風機の上に薄汚れた茶色の服と帽子をかぶった上半身だけの男がいた。

僕は怖くなって、目をそむけてそのまま寝た。

しばらくして、あの出来事もほぼ忘れていて、友達とホラー映画を見にいった。

その日は帰りが遅くなって、家に着いたのは深夜0時前。
僕は早く寝たくて、早速風呂に入った。

ホラー映画を見れば怖い事を考えてしまうもので、家族全員が寝ていることもあって、一人でシャワーをするのが怖くなってきた。

早く上がろうと考えていたとき、


バタバタッ


っと足音が聞こえてくる。

穏やかじゃない足音。
家族ではない。

しかし、その足音はだんだん風呂場に近付いてくる。

すりガラス越しにそいつの姿が見えた。
真っ赤な下半身だけが、そのまま風呂場を通りすぎて行った。

怖くなった僕はすぐに風呂を上がり、布団にもぐりこんだ。

いつの間にか寝ていて、なんだか息苦しくなって目が覚めた。

体が動かない。

金縛りだ。

自分の体の上に、誰かが乗っている。
あの上半身と下半身が合体したような人間が乗っている。

両腕を、押さえつけられている。



気が付くと朝だった。
夢だったのか。
いや確かに、両腕には握られたような痕がある。

きっとよさぶろうは、何らかの理由で上半身と下半身が切断され、体を探していたんだろう。

あれから僕は、出来るだけ早く風呂に入ることにしている。

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