嫁のちょっと不思議な能力について。
嫁は幽霊は見えないんだが、時々『影』が見えるらしい。
人の後ろにぺったりくっついているものや、電柱の影でひたすら人を見ているもの、また、溝のなかからじーっと何かを見ているものもあるとか。
ある日、嫁と散歩中、Aさん家の前で、嫁が「あの家の玄関先に影がいる」と言いだした。
「誰か待ってるのかな。なんかわかんないけど、中に入りたそう」だそうな。
気になるので翌日も見にいったら「影が増えてる」らしい。
「二つ影があるの?」
「そうじゃなくて、影の大きさが増えてる。んで濃くなってる」と。
しばらくAさん家の前を通って散歩にいくようにしたが、毎日のように増えていき、やがて、玄関が見えなくなるくらい黒い影が増えていった。
そしてその影は少しずつ少しずつ玄関のほうに近づいていった。
嫁が「気持ち悪い。もう見たくない」と言いだしたので見に行くのを止めた二日後、Aさんが焼身自殺し、その家と隣の家が延焼した。
「影って死神なの?」
と聞くと、
「違うと思う。そういうんじゃなく、なんか悪い『モノ』なんだよ。で、多分Aさんが自殺を考えたから寄ってきてどんどん寄って来たんじゃないかな…」だそうな。
しばらくして嫁とAさん家の近くを歩いてみたら、焼け跡に最初の頃見たまだ小さい影が残っていて、じーっと空を見上げていたそうだ。
数日したらそれも消えてしまったが、なんだかとても寂しそうだった…と。
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