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オジイサン

これは私の姉の彼氏が体験した話である。

ある日、姉の彼氏(A君)は、友達(B君)の家へ泊まりに行く事になった。
数人でB君の家へ向かう途中、1人が

『Bの家のアパート、家賃月1万だってよ。まじ安いよなぁ』 と言った。
A君は、それを聞いて少し不安になった。

いくらなんでも今時月1万で借りられるアパートなんてあるのだろうか。
第一、こんな何人も泊まれるようなスペースが月1万のアパートにあるのだろうか…。

少ししてB君の家に着いた。

A君は安心した。
アパートはボロボロなわけでもなく、部屋が狭そうな様子も全くなかった。
部屋に入ると、やはり見た目同様、狭いどころか広い方だった。

『なぁB、この広さなのにまじで家賃1万なのか?』

A君が疑問をぶつけると、B君は苦笑いして窓際へ行き、カーテンをあけた。
わけがわからず、窓の外を皆で見下ろしてみた。
すると、すぐ前に小さな墓地があった。

『その墓地、なんか出るって有名なんだ。まぁ、ワケあり物件ってやつ?』 とB君が言った。

A君は納得した。
と同時に、なんだか嫌な予感がした。

その夜、皆でトランプなどをして、A君たちは修学旅行のようにはしゃいだ。 すると1人が、

『何か喉かわかねぇ? 次のババヌキでさぁ、負けた奴があの墓地の自動販売機でジュース買って来るのってどう?!』

と言った。
確かに墓地の隅に自動販売機があった。

A君はなんだか嫌だな…と思ぃながらゲームに参加した。
すると、幸い負けたのはA君ではなくB君だった。

B君は渋々部屋を出ていった。

皆おもしろがって笑っていたが、A君は何だか嫌な予感がして、窓から墓地を見下ろした。

少ししてB君が来た。

人数分ジュースを買っているB君を見ていたA君は、ふと、B君の少し離れた所からおじいさんがB君をじっと見つめているのに気が付いた。

立ち姿がなんだか気味が悪い…。
というよりも、今おじいさんが立っている場所には、入口からA君が覗いている窓のすぐ下を通らないと行けないはずだ。

下を通ったなら、A君が気付かないわけがない。
ならば、どうやっておじいさんはあそこに…。

そんな事を考えていると、おじいさんがよろよろとB君に向かって歩き始めた。

これは…ヤバいかもしれない!!

直感的にA君はそう思い、B君に向かって叫んだ。

『Bー! 後ろ!!』

B君は驚いて振り返り、おじいさんのいる方をじっと見つめた。
が、すぐにこちらを向いて、

『何もないじゃねーか! 驚かすなよ!』と言った。


え…?

見えてない…?

『何言って…後ろにおじいさんが…』

……これは、本当にヤバいのではないか…?!

A君はそう思い、再び力一杯B君に向かって叫んだ。

『Bー!! お前ヤバいぞ! まじでヤバイ! とにかく走れ! 部屋にもどって来い!』

B君は意味がわからないと言った表情をしたが、A君のただならない様子を見て、すぐに走り出した。

すると突然、おじいさんが白眼をむいて

ダダダダダダダダダダダ!!

と、ものすごい速さでB君の事を追い掛け始めた!

確実におじいさんの走れる速度ではない…。

『Bーーー! 走れー! 早くー!!』A君は必死に叫んだ。

B君も必死に走り、やっとのことで入口まで来て、走り抜けた。

その瞬間、おじいさんがボッ…と消えた。

B君はその後、すぐに無事部屋にもどってきた。
他の人もA君の声に驚いて窓際にかけより、すべてを見ていた。
そのため、皆恐怖でその晩は一睡もできなかった。
あれは一体なんだったのか…。
もしB君が逃げ切れていなかったら…。
B君はどうなっていたのか…。

B君はすぐにそのアパートを引越しした。

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