これは、俺の友達が経験した実話。
そいつのことを仮にSとするけど、Sは肝試しとか好きで、よく地元のツレとかと一緒に心霊スポットに行ってたらしい。
ある秋の夜、いつものノリでツレ二人と、R寺というスポットにSの車で赴いたんだ。
R寺は県内でもそこそこ有名な場所で、特にその寺に続く下り坂がヤバいらしいんだが、S達がその坂にさしかかって車を停めたんだが、何ともない。
雰囲気も普通で、全開にした窓から秋の涼しい風が吹き込んできて心地いいくらい。
あまりにも期待外れだったので、Sは車のエンジンを切り、ライトも消してツレと談笑しはじめた。
数分後、後部座席に座っていたやつが、急に寒くなったと言い出した。
まぁ、秋も深まる季節だし不自然ではなかったし、Sは大して不審には思わずに「脅かすなら上手くやれよw」とか言っていた。
だが、後部座席のやつが寒い寒いとあまりに言うものだから、切り上げて帰るかということになった。
そして、車を発車しようとキーを回す。
が、セルが回る音がするだけでエンジンがかからない!
何度も何度も試すがかからない。
さすがに肝を冷やしたが、Sは冷静に考えてバッテリーがあがってるか確認しようとドアレバーを引く。
しかし、ロックは解除されているにも関わらずドアが開かない。
慌ててガチャガチャやっている間に車内の体感温度がどんどん下がってくる。
もう車内はパニック状態で、後部座席のやつなんかは失神しそうな勢いだった。
そして、Sがヤバい!! と思った瞬間、後ろから強烈な光に照らされた。
次の瞬間、エンジンがかかったんだが、後ろから照らしてきたタクシーの運転手が降りて、慌てて駆け寄ってくる。
そして運転手はしきりに「大丈夫か? なんともないか?」と聞いてきた。
タクシーの運転手の慌て様があまりにもすごかったので、Sは「な、何が大丈夫なんですか?」とか聞いちゃったらしい。
すると運転手が神妙な顔でこう言った。
「今、あんたらの車の後部座席の窓から、車内に入ろうとしてる女がいた…」と…。
もう一目散に逃げ帰って、心霊スポット探索は自重したそうな。
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