これは私が小学生だった頃に実際に体験した話。
その年の夏は例年よりとても暑くて、歳の離れた姉・兄の居る私は、姉家族・兄夫婦に、プールに連れて行ってもらった。
姉には、まだ幼い子供(つまり私の姪と甥)が居たから、姉夫婦と兄はその子らに付きっきり。
私は、仲の良かった義姉(兄のお嫁さん)と2人で、流れるプールで遊んでいた。
2人とも、泳ぐのはあまり好きではなかったから、ただ2人で浮き輪につかまって、流れに身を任せながら、お喋りに熱中していた。
ちょうど1周ほどしただろうか。
ただ流れるのにも疲れてきて、立ち止まった時、義姉が急に怪訝な顔をして一点を見つめ始めた。
「ねぇ…あれ、髪の毛かなぁ…??」
義姉が見つめた先には、ゴムでくくられた髪の束が流れていた。しかもよく見ると、半透明な表皮のようなものまで付いている気がする…。
気味が悪くなって、私達はすぐさまプールから上がり、姉夫婦たちのもとへ行った。
2人とも、相当真っ青な顔をしていたらしい。心配した姉たちは、ただちに帰ることにした。
私達は2人とも、絶対そのことを口外に漏らすことはなかった。
それからしばらくして、やっとそのこともうっすらと忘れた頃。
とあるPCサイトで、そのプールに関する事件の記事を見つけた。
『管理者の不注意による事故。市民プール閉鎖』
その記事によると、プール開き前には、必ず循環機械のプロペラや、浄水器の点検が行われる。
そのプールでもいつものように、業者が点検していた。
異常が無いときは点検表にチェックを入れてから帰り、異常があったら管理者にブザーで知らせ、管理者が本社に知らせ、修理に来るということになっていた。
業者は、点検時、何かしら異常を見つけたらしく、ブザーを鳴らすが、誰も来ない。
それもそのはずだった。
ブザー自体が故障していたのだから。
そんなこと知る由もない業者は、誰か本社の者が来るのを待っていたのだろう。
管理者の方はというと、いつまでたっても戻らない業者を不審に思ったが、ブザーが鳴らないのを見ると、異常は無かったのだろうと思い込んだ。
そして…放水してしまった。
業者の体は機械の中で、プロペラに巻き込まれたらしい。発見された時には、殆ど形の分からない肉片だったという。
もちろん、頭も例外ではなかった。
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